
- Vol.4
- 10.01.25
死と生がつながっていく物語

読み聞かせのボランティアに小学校へと私は通っているのですが、読みたくても号泣してしまって読めない絵本があります。それがテレニン晃子さんが書いた『ゆりちかへ ママからの伝言』を原案にした「キミに残す手紙」です。自分がひとりの娘の母親であるために、数行で号泣してしまいます。
この絵本は病のために幼い子供を残して旅立たなくてはならなかった母親が、これから育ち行く娘への想いを込めて助言や愛をたくさん詰めて書かれた内容です。テストの前の日には早く眠るようにという日常的なことから、生きる指針になるようなことまで、決して長い言葉ではありませんが、深い想いを込めて書かれてあるのがわかります。
特に、母親のことを聞かれた時に辛い思いをさせることを謝るシーンには、心が震えます。まったく相手の立場になって書くからこそ、出てくる言葉だと思うからです。
晃子さんは自分自身の死とも向き合っています。治療の痛さ苦しさ、死への恐怖。けれどそれを超えて心を占めていたのは、やはり残してしまう子供に辛い思いをさせてしまう心配だったのです。
そばにいてやれない悔しさ、運命への恨みを、彼女はどう昇華していったのでしょう?
この絵本の最後はこの手紙が未来を照らす「道しるべ」になるようにと、締められています。死ぬということは直接伝えられる機会を失うということでもあります。それでも、芯になる言葉はそう多くはないはずです。晃子さんはその芯になる言葉を、残された短い時間で絞り出していったのでしょう。
しかしここで、あとがきを読み、はっとさせられます。
晃子さんは自分の物語を出版しています。その中で、本を読んでくれた人が大きくなっていく娘に手紙を書いてくれたらという願いを残しました。死んでしまうことが終わりにはならなかったのです。自分で直接伝えられなくても、社会の中にいるたくさんの母性を持った人達をつき動かすことを考えました。
いなくなってしまった母親の代わりに、いろんな人の愛情を受け取ることができるようにと。たとえ死んでしまった後でも誰かを動かすことができる力を、人間は持っていると強く勇気づけられる話でした。
「死」はそこで終わりではなく、次につながる「生」へと受け継がれていきます。その流れを信じられたことが晃子さんの救いになっていたのではないでしょうか。そう願いたいです。
「キミに残す手紙」原案:テレニン晃子、文:梅田悟司、絵:斉藤みお
コラムニスト : 日野光里
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