
- Vol.24
- 10.06.28
『トイレの神様』からのメッセージ

最初、友達が「この歌はとってもいいから」と聞くのを薦められました。「泣けて泣けてしょうがなかった」と。
その時はまだ、その珍妙なタイトルだけを記憶して聞かないままでした。すると、また別の友達が「いいよ」って薦めてきます。
それは、まだそんなにテレビで取り上げられていない時の話。口コミで確実に流行っていってるのを感じたその歌のタイトルは「トイレの神様」です。
ようやく最後まで聞けたのは、娘をおばあちゃんちに送っていった帰り道。
「トイレの神様」は歌い手である植村花菜さんの今は亡きおばあちゃんとの思い出を元に作られた内容でした。
主人公の小学校3年から23歳くらいまでの実体験がベースになっていて、「トイレの神様」とは、おばあちゃんが主人公によく言っていた言葉に由来します。なぜ、タイトルが「トイレの神様」なのかは、ぜひ実際に歌を聞いてみてください。
聞くと、友達が強く薦めていた理由がよくわかりました。
恩返しをしていないことを悔やみ、いい孫じゃなかったと反省するシーンには我慢しきれずに、やっぱり私も泣いてしまいました。
私の娘も大変なおばあちゃんッ子です。生まれた時から、なぜか乳をやる私よりも私の母、おばあちゃんが来るまで泣いてました。眠っている間に家に連れて帰っても、起きた瞬間に「壁の色が違う。おばあちゃんちじゃない」といって泣いていました。私が入院してひと月いなかった時も、おばあちゃんがいればそれで十分らしく、看護婦さん達からも驚かれたものです。
ただ中学ともなると、なかなか長い休みでしか行かなくなってきているところ。ただ、今年はたまたまゴールデンウィークが長かったので、久々に5月におばあちゃんちに行くことになったのでした。曲を聞いたのは、その帰り道。ゴールデンウィークに帰るのは数年ぶりでしたが、おばあちゃんは孫の来たことを大変喜んでいました。そのことを思うと、やはりこのタイミングで「トイレの神様」を聞いたのは、ぐっとくるものがあったのです。
歌の中、大人になるにつれ、おばあちゃんと疎遠になる場面があります。大人になる過程で、どうしてもそういう時は出てくるでしょう。それは子離れだし孫離れだ。成長の過程で出てくるものだと思います。
けれどもし、どんなに尽くしていたとしても、別れる時になれば、「なにもしてやれなかった。恩返しが足りない」と思うような気もします。
多くの人が、この歌に感動し、涙を流すのは、この「してあげられなかった」後悔を誰もが胸に抱いているからなのではと思ってしまいました。なぜなら、私自身がそういう思いで涙が出て仕方なかったからです。
そして、もうひとつ、思い至ったことがありました。この歌がいいよと強く薦めてくれた友達はふたりとも近年親を亡くしている方からだったのです。
もしかしたら
「あなたは、まだ両親が健在なのだから、どうか悔いのないように」
というメッセージも裏にあったのかもしれません。
「トイレの神様」は決して派手な曲ではなく、どこか透明で風が通り過ぎていくようなメロディーです。けれど、その優しいささやきと、方言を使った印象的なサビの部分は長く耳に残り、何度も問いかけてきます。
「どうか悔いのないように」
それが私の受け取った「トイレの神様」からのメッセージでした。
『トイレの神様』植村花菜・キングレコード「わたしのかけらたち」収録
コラムニスト : 日野光里
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