
- Vol.28
- 10.08.17
四十九日の再生

作者がこの「四十九日のレシピ」を思いついたのは、法事に出席した時だったそうです。そこで、四十九日というのは、亡くなった人があの世へと旅立つための準備期間という話を僧侶がされてたことがきっかけとか。
しかし、読んでいて強く感じたのは、亡くなった方が旅立つための準備ではなく、残された者達があの世へ行く人を送りだせるようになるための準備期間なのだなあ、という気持ちでした。
実際に広告のコピーには、
「私がいなくなっても、あなたが明日を生きていけるように」
という言葉が記されています。
最愛の妻を亡くして呆然としている夫の元に訪れる人々。亡き妻から四十九日までの間、残された夫の世話を頼まれたという少女の出現が、この物語の軸です。大切な人を亡くしたのですから、もちろん四十九日で整理ができるわけではありません。けれど、区切りをつけることはできるはず。そう思わせてくれる一冊です。
この本を手に取る時、私の中にあったのは、茫漠とした不安です。「もしも、自分が親しい家族を亡くしてしまう事態になったら、どうなってしまうのだろう?」そんな不安の中で読み始めたのに、読後に私が感じていたのは「癒し」でした。
少しファンタジーな味付けがあり、生々しい死出の旅立ちとは少し違います。けれど、そこの脈々と流れているのは、人を思いやる心。大きな悲しみを包むやさしさ。実は、それって生きていることも、死んでることも関係なく存在しうるものだと、気づかされます。
もちろん、死んでしまう前に準備を整えておくことも大事でしょう。物語の中で亡くなってしまった奥さんは、立派に死出の旅立ちを心がけていたと思いました。準備をしていなくても、伝わる愛情は見つかると思いますが、できれば、私はなにがしかのメッセージを残しておきたいと思ってしまいました。それが、残された家族の再生を早くするのなら、なおさらです。
タイトルにもなっている『レシピ』ですが、作中で亡くなった妻の料理方法というそのものズバリのレシピから、家事の仕方まで多岐にわたりました。どういう生活をしていたかというメモ書きのようなものです。家事のレシピとも言うべきものでした。
ところが、それだけではなかったのです。
作者のインタビュー記事を読むと、『レシピ』という言葉を使った理由に、「処方箋」という意味があったからだとあり、改めて涙してしまいました。それはとても、すとんと腑に落ちる言葉です。
そしてもしも、つい最近身近な方を亡くされた方がいらっしゃったら、この本がその名前の通り「レシピ」なることがあればと願います。
「四十九日のレシピ」伊吹有喜(ポプラ社)
コラムニスト : 日野光里
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