
- Vol.30
- 10.09.18
祈りと魂を運ぶ僧侶たちの旅

終戦から65年。
戦争の記憶やいのちの尊さを忘れないために、今夏も全国各地でシンポジウムや講演会、写真展などが開かれた。
平和への願い、そして祈り。今もさまざまな形で続けられている。
祈りと言えば、2010年7月16日。
あるドキュメンタリー映画が東京で上映された。その名は『GATE』。
65年前のその日、アメリカ・ニューメキシコ州のトリニティサイトでは、人類最初の原子力爆弾の実験が行われた。
その翌月、原爆は広島と長崎に投下され、大きな悲しみに包まれる。
そして、その広島の「原爆の火」は、ある僧侶によって60年もの間、燃やし続けられていたという。
その火を原爆が生まれたグラウンド・ゼロ(爆心地)へ戻し、そこで消し去ることで、負の連鎖を絶ち、永遠に眠らせる――。
そうした日本の僧侶たちの祈りと魂を運ぶ旅が、この映画の中では描かれている。
「この世に二度と同じ悲劇が繰り返されることのないように」と祈る僧侶たちの行脚。
誰かを責めるのではなく、声高に反戦を訴えるわけでもなく、ただ、ただ、平和を祈りながら歩く旅。
その姿は、観るものの心に静かに響いていく。
道中では、こうした僧侶たちの無言の行いに心打たれ、一緒に歩き始める人や、何か自分にできないかと、手を差し伸べる人の姿が映し出されている。
国や宗教、宗派を越えた人々とのつながり、そしてわかちあい。
これこそが平和への一歩だと感じさせてくれる。
この映画は、アメリカやロシア、フランスなど、日本以外の国々でも上映されているが、上映後の反応は万国共通だという。
人々は席に座ったまま、しばらくその場を動かない。
静かにもの思いにふける人、そっと涙をぬぐう人。
それぞれの人が何かを感じ、受け取っていく。
監督は、世界核兵器解体基金(GND Fund)の代表であるマット・テイラー。
日本語のナレーションは、松嶋奈々子。主題歌は、小林武史、伊藤由奈、ミハエル・プレトニョフという、日×米×露のコラボレーションだ。
国境や人種を越えて協力し合った、平和の音色が響きわたる。
GATEを通じて発せられた平和へのメッセージ。
この映画は、静かだけれども着実に、世界を動かす力を持っている。
▼映画「GATE」のウェブサイト http://www.gate-movie.jp/
コラムニスト : 大八木智子
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