亡くなった方を送るとき〜副葬品の選択

Vol.3
10.06.02

亡くなった方を送るとき〜副葬品の選択

碑文谷 創

 お葬式の当日、葬儀をし、出棺を前にし、近親者が柩の前に集まり、柩の蓋を開けて、故人と最後のお別れをします。
ある人は故人の胸に手をあて、ある人は髪を撫で、ある人は顔を撫でながら取り縋り号泣します。立ち竦んで呆然としている人もいれば、顔に向けてひたすら合掌する人もいます。泣きむせぶ人の肩を優しく抱えるように抱き締める人もいます。

 こうした光景はお葬式のたびに繰り返されます。周りにいる人も分っているのです。家族との死別の辛さ、悲しみがどれほど深いことかを。しかも、もう亡き人とは身体をもった形では会えないのです。それがどれほど寂しいことか。だから周りの人はじっとしてこの光景を見守ります。

 しばらくすると促されるように花が一人ひとりの手に渡され、一人ひとりが名残りを惜しむように故人に花を手向けます。これを「別れ花」といいます。

 別れ花は、茎を切り取り、花弁の部分だけを用います。故人と関係の深い遺族は故人の顔の周りや胸の上に、友人・知人は脚等の下半身の周囲に花を供えます。
 このとき遺族は故人にあの世に一緒にもっていってほしいものも柩に納めます。これが「副葬品」です。

かつては、地方によっては、配偶者をかたどった人形を入れたこともあります。未婚で死んだ男性には花嫁人形を入れたりしたこともありました。あの世でも一緒に、また、あの世では幸せな結婚生活をしてくれという願いが込められていました。

 先日、私が参列した葬儀では、娘さんが亡くなったお母さんの柩に、家族でのハワイ旅行の写真を数枚しのばせていました。その家族3人でのハワイ旅行が家族の楽しい思い出だったのでしょう。

 また私の知人の男性の葬儀の場合、夫人が故人愛用のTシャツを胸にかけてあげていました。それは二人のヨーロッパ旅行で、故人が気に入って買い求めたものだったとのことです。蓋を閉じる前に夫人が両手でTシャツを広げ、いとおしげに、大切に優しく胸にかけて、「ありがとう。また、きっと会いましょうね」と語りかけていました。

 こんな光景もありました。高齢のお祖父さんが亡くなったとき、お孫さんたちが「お祖父さんへの手紙」を書き、それを柩の中に納めたのです。孫たちにとって優しいお祖父さんであり、故人であるお祖父さんにとっては可愛い孫たち、という関係だったのでしょう。

 経文の書かれた散華の紙の花を副葬品とすることもあります。あの世での仏弟子としての修行、安心、成仏を願ってのことでしょう。

 このように、さまざまな副葬品があります。故人と遺族との関係において、それはさまざまです。遺族の故人への感謝の想い、故人への愛情、故人のあの世での幸せを願う気持ち、祈りが副葬品には込められています。

 しかし、柩の中には入れられないものもあります。火葬時に爆発のおそれのあるもの、燃えないもの、遺骨を着色するおそれのあるものです。具体的には、メガネ、酒の瓶等のガラス製品、金属製の釣り竿、ゴルフクラブ、仏具等、書籍、果物等です。
 愛用のメガネ等は、火葬後に遺骨を納めた骨壷や骨箱に一緒に納め、お墓への副葬品とすることができます。

碑文谷 創(葬送ジャーナリスト)

1946年岩手県生まれ。雑誌『SOGI』編集長を務めるかたわら、死や葬送関係に関する評論ならびに講演活動をテレビ・新聞・雑誌等で展開。
著書は『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫)『Q&Aでわかる葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)『新・お葬式の作法~遺族になるということ~』(平凡社新書)『死に方を忘れた日本人』(大東出版社)『葬儀概論』(表現文化社)ほか。
監修『お葬式』『自分らしい葬儀』『冠婚葬祭暮らしの便利事典』(小学館)ほか。

ホームページ : http://www.sogi.co.jp