
- Vol.2
- 10.04.20
葬式は必要!

こんにちは、一条真也です。
このたび、新刊『葬式は必要!』(双葉新書)を上梓しました。
いま、日本人の冠婚葬祭、特に葬儀を取り巻く環境が激変しています。
家族葬、密葬から、現在は直葬が非常に増えてきています。
その背景には様々な要因があるのでしょうが、一つには、日本社会全体が「無縁社会」になってきているということだと思います。
この「無縁社会」は、NHKスペシャルで1月31日に放映されて大変な反響を呼びました。なんと、1年間に3万2,000人もの人たちが無縁死されているそうです。
もう一つは、島田裕巳氏の『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)という本が非常に売れているということです。
このような「葬式無用論」というものが出てきて、「無縁社会」と同様に現代のキーワードになってきています。
はっきり言って、葬式が要らないはずがありません!
葬儀は人類が長い時間をかけて大切に守ってきた精神文化です。
約6万年前にネアンデルタール人が死者を埋葬した瞬間、サルが人になり、人類の文化がはじまったという説もあります。
葬式をやるから人間なのです。
日本人が本当に葬式をやらなくなってしまったら、人類社会からドロップアウトしてしまいます。
『葬式は、要らない』などという本が世に蔓延しては良くありませんので、わたしはカウンターパンチというかアンサーブックとして、『葬式は必要!』を書き上げたわけです。全篇、島田氏の葬式無用論に対する反論となっています。
あらゆる生命体は必ず死にます。もちろん人間も必ず死にます。
親しい人や愛する人が亡くなることは悲しいことです。
でも、決して不幸なことではありません。
残された者は、死を現実として受け止め、残された者同士で、新しい人間関係をつくっていかなければなりません。 葬式は故人の人となりを確認すると同時に、そのことに気がつく場になりえます。
葬式は旅立つ側から考えれば、最高の自己実現であり、最大の自己表現の場ではないでしょうか。
「葬式をしない」という選択は、その意味で自分を表現していないことになります。
「死んだときのことを口にするなど縁起でもない」と、忌み嫌う人もいます。果たしてそうでしょうか。
わたしは、葬式を考えることは、いかに今を生きるかを考えることだと思っています。
ぜひ、みなさんもご自分の葬義をイメージしてみてください。
そこで、友人や会社の上司や同僚が弔辞を読む場面を想像して下さい。
そして、その弔辞の内容を具体的に想像して下さい。
そこには、あなたがどのように世のため人のために生きてきたかが克明に述べられているはずです。
葬儀に参列してくれる人々の顔ぶれも想像して下さい。
そして、みんなが「惜しい人を亡くした」と心から悲しんでくれて、配偶者からは「最高の連れ合いだった。あの世でも夫婦になりたい」といわれ、子どもたちからは「心から尊敬していました」といわれる。
どうですか、自分の葬儀の場面というのは、「このような人生を歩みたい」というイメージを凝縮して視覚化したものなのです。
そんな理想の葬式を実現するためには、残りの人生において、あなたはそのように生きざるをえなくなるのです。
村上春樹さんの新刊『1Q84』BOOK3が大きな話題を呼んでいますが、わたしが一番関心を持ったのは、物語の終盤に出てくる葬儀の場面です。
主人公の一人である天吾の父親が亡くなりますが、生前はNHKの集金人をしていました。
そして、棺に入るときにはその制服を着せてほしいと遺言します。
天吾は、とまどいながらも、父の希望をかなえてあげます。
父親の葬儀は通夜も告別式もない、そのまま火葬場へ直行する「直葬」です。
火葬に立ち会う人間も、息子である彼一人だけ。
そこへ、病床の父を介護した若い看護婦である安達クミが付き添ってくれます。
これで父を送る「おくりびと」は二人になりました。
「一緒に来てくれてありがとう」と礼を述べる天吾に対して、安達クミは、「一人だとやっぱりきついからね。誰かがそばにいた方がいい。そういうものだよ」と答えます。
「そういうものかもしれないな」と認めた天吾に、安達クミは次のように言うのです。
「人が一人死ぬというのは、どんな事情があるにせよ大変なことなんだよ。この世界に穴がひとつぽっかり開いてしまうわけだから。それに対して私たちは正しく敬意を払わなくちゃならない。そうしないと穴はうまく塞がらなくなってしまう」
この言葉は、わたしがつねづね言っていることだったので、本当にびっくりしました。
世界にぽっかりと開いた穴に落ちないための方法、それこそが「葬式」と呼ばれるものです。
人類は、気の遠くなるほど長い時間をかけて、この「葬式」という穴に落ちないための方法を守ってきました。
葬式は人類の存在基盤です。
昔、「覚醒剤やめますか、人間やめますか」というポスターの標語がありましたが、わたしは、「葬式やめますか、人類やめますか」と言いたいくらいです。
つまるところ、「葬式は必要!」なのです。
こんな考えや思いを一冊にまとめてみました。
4月20日、全国で一斉発売されます。
どうぞ、ご一読のほど、よろしくお願いいたします。
作家:一条真也
書籍のご紹介
『世界一わかりやすい「論語」の授業』(PHP文庫)
『のこされた あなたへ〜3.11 その悲しみを乗り越えるために』(佼成出版社)
『隣人の時代〜有縁社会のつくり方』(三五館)
『葬式は必要!〜最期の儀式に迷う日本人のために』(双葉新書)
『ご先祖さまとのつきあい方~お盆、お彼岸、墓参り、そして無縁社会を乗り越える生き方』(双葉新書)
『愛する人を亡くした人へ~悲しみを癒す15通の手紙』 (現代書林)
『また会えるから』 (現代書林)
『思い出ノート』 (現代書林)
『ロマンティック・デス~月を見よ、死を想え』 (幻冬舎文庫)
『魂をデザインする~葬儀とは何か』 (国書刊行会)
『最期のセレモニー~メモリアルスタッフが見た、感動の実話集』 (PHP研究所)
『むすびびと~こころの仕事』 (三五館)
『結魂論~なぜ人は結婚するのか』 (成甲書房)
『老福論~人は老いるほど豊かになる』 (成甲書房)
『世界をつくった八大聖人~人類の教師たちのメッセージ』 (PHP新書)
『面白いぞ人間学~人生の糧になる101冊の本』 (致知出版社)
『人間関係を良くする17の魔法』 (致知出版社)
『涙は世界で一番小さな海~「幸福」と「死」を考える、大人の童 話の読み方』 (三五館)
『茶をたのしむ~ハートフルティーのすすめ』 (現代書林)
『花をたのしむ~ハートフルフラワーのすすめ』 (現代書林)
『灯をたのしむ~ハートフルライティングのすすめ』 (現代書林)
『香をたのしむ~ハートフルフレグランスのすすめ』 (現代書林)
作家・経営者・平成心学塾塾長・大学客員教授 1963年福岡県北九州市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒
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